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IT業界の多重下請けによる中抜き問題【被害に合わない方法】

IT業界の多重下請けによる中抜き問題【被害に合わない方法】
IT業界の下請け・中抜きについて知りたい人

  • 「IT業界の下請けとはなんだろう?」
  • 「開発費の中抜きとは?どうして中抜きが起こるの?」
  • 「中抜き被害に遭わないためにはどうすればよいのかな?」

 

この記事ではそういった悩みを解決します。

 

この記事でわかること

  • IT業界の多重下請け構造とは?
  • 開発費の中抜きとは?
  • 中抜き被害に遭わない2つの方法

 

記事の信頼性

  • エンジニア歴8年
  • 自社製品の開発で現役プログラミング中
  • 開発を委託して管理する仕事を経験
    ソフト開発の委託の仕組みの現実を知っているので、業界の下請け構造や中抜きについて解説することができます。

 

新型コロナウイルス陽性者との接触を知らせるアプリ「COCOA(ココア)」の開発で、厚生労働省の委託先の企業が別の3社に契約金額の94%で再委託していたことが分かりました。

これによりIT 業界の下請け構造が明るみに出て、さらには開発費の「中抜き」が注目されました。

 

 

そもそも「下請け構造」「中抜き」とはなんでしょう?

 

下請け構造・中抜きとは?

  • 下請け構造:開発を委託された企業がさらに別の会社に開発を委託、その会社がまた別の会社や個人に開発を委託するという構造のこと
  • 中抜き:下請け構造の中で、委託を受けた企業が再委託する際、自社が開発に充てる工数以上の開発費を利益として得ること

 

一般の方からするとあまり馴染みのない言葉で、下請け構造とか中抜きとか初めて聞いた人も多いかもしれません。

ですが、エンジニアを目指す人なら業界の構図を知っておく必要があります

もしあなたが開発を委託する立場になったときに適正な開発費かを見極められないと、成果に見合わない開発費を支払うハメに…

そこで本記事では

  1. 下請け構造の理解
  2. 中抜きが起こる原因

を解説します。

合わせて、中抜き被害に遭わないためにどうすれば良いか?という点を解説します。

この記事を読むことで、中抜き被害に遭わずに開発委託できるようになります。

 

IT業界の多重下請け構造とは?

多重下請け構造とは、開発を委託された企業がさらに別の会社に開発を委託、その会社がまた別の会社や個人に開発を委託するという構造のこと。

 

  • 元請け:発注元
  • 一次下請け:元請けから仕事を受ける事業者
  • 二次下請け・孫請け:一次下請けから仕事を受ける事業者

 

一次受けは工程管理や作るものの仕様を策定し、実際の開発業務を二次受け・孫請けにお願いすることで開発を進めたりします。

多重下請け構造は建築業界でも行われていて、総合建築事業者のことをゼネコンと呼ぶことからITゼネコンとも言われたりします。

 

建築業界では、元請け事業者であるゼネコンが国や地方公共団体、民間企業から土木工事や建築工事を受注し、下請け事業者となるサブコンに発注し、さらにサブコンが中小の職人を抱える事業者に発注する重層下請け構造になっている。
[ITゼネコン - Wikipedia

 

開発を下請けに委託する理由

「開発を下請けに委託すること自体が悪」という訳ではないありません。開発を委託したい企業と、開発を受けたい企業、どちらも需要があるから成り立っているわけですので。

 

なぜ開発を委託するのか?というと主な理由は以下の3つです。

 

  1. スケジュール通りに完遂する開発体制を組めない
  2. 自社で開発しなくてもできる
  3. 開発費のコストダウン

 

開発体制を組めない

開発を依頼されたもののスケジュール通りに開発を完遂するためのエンジニアをアサインできないケースです。

 

  • 他のプロジェクトに参加している
  • 開発規模に対して人数が足りない

 

こういった場合に開発リソースを確保する目的で下請けに開発を委託することがあります。

 

自社で開発しなくてもできる

開発難易度が高くないため下請けに開発委託しても開発を完遂できるケースです。

技術的な難易度や要求される納期が厳しい場合は、高いスキルをもつ信頼できる自社のエンジニアで開発を行います。
一方で、技術的な難易度がそれほど高くなくて納期も厳しくないのであれば、自社でポイントを抑えることで開発を委託することも可能になります。

もちろん発注する側は成果物の品質に責任を持つため、自社のスキルを持ったエンジニアが設計のレビューに参加することで品質確保を行ったり、スケジュール通りに開発が進められているかの工程管理を行ったりします。

 

開発を下請けに委託することで、より難しく単価が高い開発は自社で請け負いつつ、複数の開発を並行で進めることができ、売り上げ拡大を狙えるようになります。

 

開発費のコストダウン

自社で作るより安く開発できる企業があれば委託することで開発費のコストダウンに繋がるケースです。

代表的な例がオフショアと呼ばれる日本と比べて人件費の低い海外の企業に開発を委託することです。

一般的に日本のITエンジニアの単価は1月100万円程度ですが、ベトナムなどのオフショアの場合は月25〜30万円程度とかなり安価に発注できることが多いです。

 

下請けの問題点

責任の所在が不明確

下請けの問題点は何か不具合があった場合に責任がどこにあるのかが不明確になるということ。

発注元は成果物が要求仕様と違っていて依頼した通りに作らなかったと責任を下請け企業に押しつける(ことをよく見かける)。

 

開発を委託するものの成果物に対して責任を取る、だから外注が許されるはずなんだけどね。

 

不具合解析ができない・遅い

何か不具合があった場合に原因の解析が自社で迅速にできなかったり、結局自社では分からず委託先に調査を依頼する必要があります。

というのも、自社で開発していないわけなので設計や実装レベルなどソフトの中身の作りまで把握していなから。解析するにも何を調べたら良いか分からない、といった状況です。

実際、COCOAアプリ開発のパーソルの例では管理工数と言う名目で開発費の数%を受け取っているが、作ったものに対しては中身を見ていないので、不具合があっても原因の特定ができませんでした。

 

そんなやつはエンジニアを名乗る資格ないぜ。

 

余談:医療機器ソフト開発の委託の難しさ

ちなみに、私は普段医療機器ソフトの開発をしていますが、開発を丸投げするプロジェクトは見たことがありません。

というのも、医療機器に該当するソフトウェア開発は、IEC62304(Medical device software - software Life Cycle Processes)という規格に準拠する必要があります。

何かというと。ソフトウェアの安全性や品質リスクをマネジメントできる体制が会社として備わっていることが求められている。

つまり、アウトソーシングが基本的に難しくて自社で作るソフトについて把握していないなんてことがありえません。

 

開発費の中抜きとは?

元請け

↓ 1億円で開発を委託

一次受け

↓ 5000万円で開発を再委託。工程管理という名目で特に何もしない。5000万円を得ている。

二次受け

↓ 2000万円で開発を再委託。工程管理という名目で特に何もしない。3000万円を得ている。

孫請け

 

開発委託を受け、さらに開発を再委託する場合、

元請けから受け取る金額 - 自社で開発に関わる費用 - 委託先に払う金額

が請け負った企業の儲けとなる。

 

この儲け額が開発に関わる労力以上の費用を開発費として受け取ると利益になる。これを中抜きと言う。

 

もちろん、開発する工数に見合った対価を得ているのであれば何も問題はない。

先程の例で言うと、もし一次受け・二次受けが何もしていない場合、もともと開発したいソフトは2000万円しか必要なかったということ。
元請けは孫請けに直接発注すれば2000万円で開発できたかもしれないのだ。

 

全体で見ると対価に見合わない8000万円が企業の利益として流れている、というのがIT業界の多重下請け構造。

 

なぜ中抜きが起こるのか?3つの理由

「中抜きされるような発注をするのが悪いんじゃ…?」

 

確かにその通り。

 

中抜きが発生する理由は主に以下の3つ。

 

  1. 元請けの発注先選定事情
  2. ソフト開発費の適正価格が分からない
  3. 発注する側の予算が潤沢

 

元請けの発注先選定事情

大手企業が元請けになる場合、発注先はそれなりの資本金や従業員規模の会社でないと発注できないというケースがあります。

 

例えば、発注先の従業員数が少なく、要員の体調不良や退職などが発生しても体制の再構築はできるのか?などリスクに対する責任を取れるような取引規定が決められていたりします。

 

実際に開発を行う孫請け企業に直発注すればソフト開発は実現できるものの、従業員数や資本金が多い体制の強い企業に開発をコントロールして欲しい、という背景があります。

 

ソフト開発費の適正価格が分からない

作りたいソフトウェアに対しいくらぐらいコストがかかるのか、元請けが想定できていないときに中抜きは起こります。

 

もちろん元請けは安くしろとはリクエストはしますが、

最初から値段をふっかけられる→少し値下げした→元請けが満足して承諾→でも実はまだかなり上乗せされた金額だった

 

というのが判断つきませんよね。

 

特にソフトウェアの開発費のほとんどは人件費のため、適正な費用なのかが見えにくい部分があります。

一次受けは自社で開発せずプロジェクト管理だけやっている、ということも元請けからすると見えなかったりします。

 

予算が潤沢

元請けの予算が潤沢だと多少の誤差も気にしない場合、中抜きが発生しやすいです。

例えば、3億のプロジェクトが3億3000万ぐらいになったとしても、10%なら誤差程度と見てしまうケースです。

 

国が主導で開発を行う場合、国立競技場の建設費用3000億円とか各世帯へ給付金を支払うのに必要な予算に比べれば、COCOAアプリの開発費3億円などは微々たるものですよね。

 

中抜き被害に遭わない2つの方法

ではどうすれば発注する側が中抜き被害に遭わずに済むのか?

アイデアは2つ。

 

  1. 開発しようとしているソフトのコストが適正かを判断できるエンジニアをチームに入れる
  2. 自分で判断できるようにソフトウェア開発の知識を習得すること

 

特にこれからはデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速すると言われているように、プログラミングをはじめとしたIT知識を誰しもが獲得しておくべき時代です。

 

「そんなこと言われても急にできない…」

 

というあなたに最短で知識を得ることができるおすすめの方法がプログラミングスクールに通うこと。

 

ここで大事なことはプログラミングを本格的に学ぶのではなく「プログラミングってこういうものか!」という概要を学ぶことです。

全く知らない状態より、概略が分かるだけでも世界が違って見えますよ。

 

特にプログラミングスクールでは無料体験を行っているところや無料カウンセリングを行っているところがあります。

気軽に体験してみたり、「こういうことができるようになりたい」とカウンセリングの場で相談してみると答えが見つかりますよ。

 

無料体験付きのプログラミングスクールは『【現役エンジニア厳選】おすすめのプログラミングスクール3社【無料体験あり】』の記事でまとめていますので、参考にしてみてください。

 

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